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ハマスホイ

更新日:2021年12月26日

今日はSさんがデッサンをする日なのですが、デッサンに入る前にトーンや光の捉え方について、少し巨匠に学んでおきましょうということで、Sさんのお気に入りの画家のひとりハマスホイを模写してもらいました。☆ヴィルヘルム・ハマスホイ(ハンマースホイとも Vilhelm Hammershøi 1864~1916) 


模写とは語学学習における発音練習のようなもの、野球における素振りのようなものだと思います。まずは道具や体の使い方を型として身につける。これナシでいきなりデッサンしてみてもなかなかうまく行かないものです。(それに結局のところ、なんであれ絵を描くという行為であるからには何らかの「型」「形式」を模倣し踏襲しているはずです。)それがひとつの「型」に過ぎないことを意識するためにも、また、せっかくなら型(方法・やりかた)は憧れの画家から学んでほしい(そこには必ずひとの心を動かすような「感覚」があるはずですから)、ということもあって、当教室ではこうした模写を課題にとりいれています。


課題のポイントを整理するため、まずは講師から作品分析のレクチャーがありました。

先日開催された『ハマスホイとデンマーク絵画』展は、ハマースホイをとりまく文化的歴史的環境を理解する上で有意義でしたが、彼が同時代の画家や先行する画家たちと共有した問題を背景にして、あらためてハマースホイを特徴づけるものは何かと考えたとき、一つには光の扱い方があります。

透過光、反射、反映、照射、薄明かりとほの暗さ、そして光が吸い込まれていくような闇の領域・・・。明度はハイキーからローキーまで使い分けられています。彼の絵はモノを描くというより、多種多様な光の運動や振る舞いが形作る空間こそを描いてるかのように思われます。ルドンロスコに少し似ています。ハマスホイ自身は建築に興味を持っていたそうです。




もうひとつは構図の作り方です。矩形によって空間を切り分け、あちらとこちら、あれとこれといった区別(差異)を画面の中に作り出します。この差異は、客観的な距離としては測れないような絶対的な差異です。「あれ」と「これ」という言い方がそうであるように。この差異が、空間の拡がりや、絵画を見る上での時間の流れ、運動を可能にします。

人物が描かれていないときでさえ、そこになんらかの動きのようなもの、息づかいのようなもの、人がそこにいる(いた)だろうという気配のようなものが彼の絵から感じられるのは、人間が生活するための建築空間が主なモチーフであるからというだけでなく、こうした空間の分節と多彩な光の運動とのコンビネーションによる、というのが講師の分析でした。




Sさんには主にハイキーからローキーまでの明度の幅、光の扱いに着目しつつ模写をしてもらいました。一回の授業ではフィニッシュしませんでしたから次回までの宿題になっておりますが、次回以降の展開も楽しみです。

 
 

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